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噂のブックレビュー
汝、星のごとく
凪良ゆう著 / 講談社文庫
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本作を読む前に、作者の経歴を知った。「つらい過去を物語のおかげで絶望にならなかった。物語の世界は逃避だけれど、生き延びるためには必要だった」と述べられているように、絶望を絶望とせずに描くその言葉選びに心を惹かれた。リズミカルなストーリー展開と構成に、ページをめくる手が止まらなかった。
物語は、男にだらしない母を持つ櫂と、父親の不倫により精神を病んだ母を持つ暁海の出会いから始まる。思春期に出会った二人は、恋人として愛と不幸を分かち合いながら、自立と再生の道を歩んでいく。母との関係が人生を左右する「毒親」をテーマに、子どもが背負わされる苦悩が丁寧に描かれている。
シングルマザーや児童虐待といった、子どもに罪はないのに母親の影響で悲惨な人生を歩まざるを得ないというテーマは、重くも読みごたえがあった。
読み終えたとき、数々の悲惨な状況を目にしたはずなのに、まるでファンタジーを読み終えたような感覚が残った。それは、リアリティよりもアニメ的な描写が印象に残ったからかもしれない。登場人物たちの抱える問題が、説明的な言葉で語られる点にも、アニメ的な手法を感じた。しかし、その言葉の数々が心に響いたのも事実で、現実的な描写よりも分かりやすく、読者の共感を得やすいのかもしれないと考え直した。凪良ゆうという作家の小説作法は、新しい小説の形式として認知されるべきだと思う。
舞台となる瀬戸内の島は、人間関係の希薄な東京と対比される場所として描かれているが、この島こそが、作者の考える「世間」なのだろう。島でなくても、男を追って都会から来たシングルマザーがスナックを経営していれば、どんな町でも色眼鏡で見られるし、高校生の不純な交際もまた、どこでも批判の対象になる。
小説の中では不倫をしている登場人物も多いが、不倫そのものは肯定も否定もされていない。世間の常識にとらわれず、自分らしく生きる道を選べばいい。たとえそれが不倫であっても。そんなメッセージを受け取った気がした。
